焦がれる吐息





「……また、百瀬くんの部屋行きたいな」


どうせ聞こえてないからと、ぽろりと調子に乗った願いを最後に私も目を閉じる。


目蓋の裏に昨夜の星空を浮かべて頬が綻ぶ。

すると、透かさずまた温まりが緩まる。

目蓋に柔い感触が触れる。

もう覚えてしまったその感覚に慌てて目を開ければ、まるで愛おしむように目を細めた彼がいた。


「ま、た寝たふりしてたんですか」

「こんな状況で呑気に二度寝なんてできません」

「、いまの」

「ちゃんと聞いてました」

「っ、いじわる…」


かあっと熱がのぼって、咄嗟に顔を両手で覆う。

本当に寝ていると思ったのに、逆にもっと恥ずかしい沼に墜落してしまった…いっそ羞恥心で気絶したい…また部屋に行きたいなんて、気持ち悪がられていないだろうか。


そんな不安に打たれたのはほんの一瞬で、顔を隠す両手はやさしく剥がされる。



「人が寝てる隙に可愛いこと言ってる人の方が意地悪じゃないですか」


甘く囁かれながら引き寄せられ、ぎゅうと苦しいくらいに抱き締められる。


「俺も、人生で一番嬉しい日でした」


「本当に、ありがとうございます」


噛み締めるように丁寧に紡いでくれた言葉が嬉しくって、胸がじーんと熱くなる。


「……こちらこそ」


恥ずかしさよりも愛おしさが上回った私は、彼の鼓動が鳴る胸元にそっと寄り添ってみた。


その瞬間、その時間。

蜂蜜色の朝日を浴びた私たちの心はきっと同じくらいに温まっていて、まるで二人でその温もりを大切にし合っているような柔らかなひとときだった。