予想外のお茶目な嘘に、緊急な羞恥心に襲われて咄嗟に「もうっ…」と広い胸をトントン叩いて離れようとした。いつから起きていたのだろう。
「……まだ眠いです」
すると、いつもと違ってまったりとした低い声、甘えるようにむぎゅうと更に巻き付かれてしまう。
本当に朝が弱いのか、将又、あざとい計算なのか、今までの百瀬くんがタチが悪かっただけに分からない。
どちらにせよ、こんな時に初めてかわいい年下らしさのようなものを感じてしまって、もう少しこのまま…なんて危うく絆されそうになってしまう。
けれど素直な心臓はキュンキュンと限界を迎えそうだから、窮屈な腕から必死に顔を上げ眉を寄せる。
「あの、どうして百瀬くんが私のベットに…?」
私のむっとした声に、羽のような睫毛がゆったりと上がっていき眩しそうに細められながら美しい瞳がようやく覗く。
至近距離の今、蜂蜜色の光を浴びたその瞳の中は、虹彩の模様さえもはっきりと見える。
彼の瞳はやっぱり瞳孔からお花が咲いているように黄色味がほのかに帯び、そこから外側に向けて青みの強い澄んだグレー色が広がっていた。
出逢ったことのない繊細さはまるで神様が丁寧に磨きあげたガラス細工のようで、朝日よりも眩しくて仕方がないのにずっと眺めていたくなった。
百瀬くんはその神秘をまた直ぐにでも閉じそうなくらいにトロンとさせながら、私へ手を伸ばす。
「……離れたくなかったから」
静かにストレートな言の葉をのせて、長い人差し指の背が目尻をやさしく撫でる。
彼の触れ方は夜でも朝でも、いつだって丁寧で。
眠る前も起きたばかりでも百瀬くんの隣は四六時中、心臓がくるしい。



