ほんとうは抜け出そうと思えば幾らでも抜け出せるし、早く起こせばいいものの、どうしてか、この瞬間を壊すのが勿体無くて。
毛穴ひとつも見つからない真っ白な陶器のような肌を見つめ、いつもよりも幼く感じる無防備な寝顔をうっかりぼんやりと眺める。
カーテンの隙間からは惜しげもなく蜂蜜色の光がきらきら溢れていて、朝寝坊の明かりが彼をやさしく照らしていた。
「(……どうして、変に緊張したんだっけ)」
もう一度、ゆっくり記憶を辿り始めて。ふと、朝でも麗しい桜色の唇に目がいく。
そして、漸く思い出す。
“……煙草、吸いたくなってないですか?”
“これは、俺がしたくてしました”
「(……き、す…ももせくんと…!)」
途端にかあっと頬が燃えて、思わず彼の胸に顔を埋めて一人じたばたした。
すると徐に、ふっと漏れたような笑声と同時、広い胸元がやさしく揺れた。
驚いて瞳をあげると、彼の長い睫毛は伏せられたまま。でも桜色の唇の端は堪えきれないように、微かに弛んでいる。
「……起きてるんですか」
「寝てます」



