焦がれる吐息




「(……8頭身?いや、9頭身?)」



思わず惹かれてしまったのは、業界の中でもトップクラスの類稀なスタイルだったからだ。

施設の調理スタッフだろうか。

格好は白いコックコートに腰エプロン。

足元には大きなゴミ袋が数個。


星一つない夜空を仰ぐ小さな顔は、深く被った真っ黒のキャップ、真っ黒なマスクのせいで全然見えない。

でも、目が離せない。

隠しきれていない、匂い立つ魅惑的なフェロモンを感じる。


この時たぶん、野生のカンが強く働いていた。


目を凝らしながら、その完璧なスタイルに吸い寄せられる。 


獲物を捕らえる肉食獣のように、こっそり園庭へと足を踏み入れ、気づかれないようにひっそり近づいた。


「(あーん、顔が気になるぅう〜)」


そう、約十数メートル手前で唇を尖らせたときだった。




彼は、徐に帽子をとり、照らし出された輝く金色の髪をワシャワシャっとなおす。

そしてマスクを下げて、一本、煙草を咥えた。

ゆっくりと長い睫毛を伏せ、ジッと揺らめく火を灯す。

細い煙を目で追うように、もう一度、静かに天を仰いだ。



「(……あーやっばい子、見つけちゃった…)」


虜になるのに、時間は必要なかった。

美しさ、色気、侘しさ、危うさ、全てが投影されたその流れる仕草に瞬間的に惚れた。

容姿はもちろん。

彼の雰囲気まるごと、酷く美しかったのだ。

そのままどこかの映画のワンシーンに使いたかったほど、胸に刺さるものがあった。