焦がれる吐息





身体の芯がじんと熱くなり、このままでは確実に理性なんて消え失せてしまいそうで。


「ほら、もう寝ますよ」


無防備な彼女に触れるのを止め、ぽんぽん、と小さな頭を撫でて立ち上がろうとした。なのに、透かさず肘あたりのスウェットが引っ張られ、容赦なく危険な沼に引き摺り込まれる。


「あとひとくち」


しっとりした甘い声、上目で見つめてくるのは、懇願するような濡れた瞳。

……とことん、この人は、狡い。

はあ、と苦し紛れの溜め息を吐きながら前髪を掻き上げる。


「……このワイン、そんなに好きなんですか?」


渋々座り直して、もう残り数センチしか残っていないボトルに手を伸ばした。

彼女が買ってきてくれた鮮やかな水色のワインは初めて見た色だった。

飲み始める前、澄香さんはカクテルレシピ片手に、お薦めの割り方を珍しく楽しそうに教えてくれた。でも、そんな彼女が飲んでいるところを見たのも今日が初めてだ。

余程気に入った味だったのか、覚えておこう、なんて呑気に思いながら彼女のグラスにそっと水色を注ぐ。

ゆらゆらと美しく揺れていく液体を見届けていれば、

「……ワインが、すきっていうか、」


恥ずかしそうな、小さな声が鼓膜を擽った。

視線を向ければ、彼女は膝に口元を埋め、躊躇うように幾度か瞬きを繰り返す。

そんなに言いにくい事を聞いてしまっただろうか、空っぽになったボトルを置いて首を傾げた。


「ていうか…?」

「…も、もせくんの、」

「?」

「だから、」


なかなか言葉が進まない彼女は、ぱっと手を伸ばし今注いだグラスを掴む。隠れていた唇はやっぱり恥ずかしそうに、ふに、と結ばれている。

その可愛い唇がグラスに添えられる直前。


「…百瀬くんの綺麗な瞳に似てるから、好きなだけ。」


伏し目がちに、照れ臭そうに紡がれた言葉。

そして彼女は、その言葉をのせた液体を一気に呷る。


ぐわっ、と奥底が燃え盛る感覚を覚えた。