その姿に心配になって、ワインを抱き締めながら同じように彼の前にしゃがみ込む。
「すみません、嫌でした…?」
「……いや違くて、こういうの、初めてで、」
すると彼は、顔を隠したまま掠れた声を辿々しく零した。
それが、無性に涙を誘う。愛しさが溢れ出る。
柄にもなく、私の頬は柔らかに綻んだ。
「私も、こんなに誰かの誕生日の事を考えたのは初めてです」
「……」
「あ、いやでも恥ずかしい話、全部買ってきただけなんですけど。私、実は料理が大の苦手で……準備してみてこういう時、手作りできたらなって初めて思いました」
「……」
「だからその……今度、料理教えてください」
自分でも何を言ってるんだと頭はこんがらがり、頬を熱くしながら。
「料理だけじゃなくて、百瀬くんのことも。好きな食べ物でも音楽でも、何でもいいので百瀬くんが話せる事、少しずつ教えてください」
震えたパーの手に、そっと手を重ねた。
「百瀬くんが百瀬くんのこと話してくれるの、私、待ってます」
どうか、彼が安心して自分の事を曝け出せるようになりますように。
もう、侘しい影を落とす事がありませんように。
相変わらず絆創膏が貼られた長い人差し指と中指が痛くならないように気をつけながら、願いを込めて大きな手のひらを包み込む。



