いつものように優しげに目尻を垂らして嬉しそうにしてくれるだろうか、それとも恥ずかしそうに顔を隠す?
勝手に百瀬くんの反応を想像して胸を膨らませていた。
けれど、そのどれも悉く外れて。
「……誕生日?」
また、彼はまるで初めての経験のように、無垢な瞳に戸惑いの色を浮かべる。
ただ瞳を揺らし、どう反応すればいいのかすら分かっていないような気がした。
そんな百瀬くんを目に、ふと、心に切ない風が横切る。
『……迎えに来てくれた日…?誕生日、だったんですか?』
『……だと思います』
自分の生まれた日付を曖昧に答える横顔。
そして、その無機質な姿と、“しーちゃんの部屋”が何となく脳裏で重なる。
どちらからも感じる孤独な空気が痛く胸を突いてきて、視線を落とした。
……百瀬くんが私にしてくれたように、私も、百瀬くんの心を温めてあげられたらいいのに。
そんな烏滸がましい想いが遣る瀬無く胸に蔓延って、折角冷やした彼の瞳色のワインをどうしてもぎゅうと包み込んでしまう。
「……お祝いしたかったなって本当はずっと思ってたんです」
顔色を伺うように瞳をあげれば、彼は時が止まったようにずっと目を丸くして固まっている。
恥ずかしさに負けないようにちゃんと顔をあげて、そんな彼に真っ直ぐな瞳を捧げた。
いつも、彼が私を真摯に見つめてくれるように。
「生まれた日って誰にとっても大切な日なので。だから百瀬くんの20歳のお祝い、一緒にしてもいいですか?」
照れ笑いを小さく浮かべ首を傾げれば。
まじわる青の瞳には徐々に透き通った膜が張り、潤んだ輝きが浮かんでいく。そしてほんの一瞬、顔を歪め、まるで今にも泣き出してしまいそうな表情をした。
それを隠すように、彼は片手のひらで顔を覆い。
長い長い溜め息を吐きながら、腰が抜けたようにストンとしゃがみ込んでしまう。
「百瀬くん、」
「あーっと、ちょ、っと待ってお願いほんと…」
そう言って私に向けられたパーの手のひらも、その切羽詰まったような小さな声も、微かに震えているような気がした。
途端に胸がきゅうと締め付けられる。



