焦がれる吐息






———それは数ヶ月前、昼間の暑さが和らぐ真夜中。


場所は、“こどもの家 スミカ” 。

そこは、経営難に陥っていた児童養護施設だった。

人づてに聞き、手を差し伸べたことで結びついた場所だ。

事務所を通じて多くの業界人も支援してくれて、見事再建し。涙ながらに喜んでくれた経営者が「心機一転、ぜひ施設に新しい名を!」ということで、張り切って命名したのが"こどもの家 スミカ"だった。

由来は、どんな子供たちにとっても安心できる住《す》み処《か》になるように、そして愛しのスミちゃんの名前を拝借した。

恐る恐るスミちゃんにそのことを話せば、返ってきたのは「ふーん」と煙草片手に得意のお澄まし顔。

アタシには分かる、とっても照れていたのだと思う。相変わらず、えぐ可愛い。


『いや〜本当に、三輪社長には感謝してもしきれません!!!』

『ふふふ、いいのよもお〜それより子どもたちの寝顔、ちょっと見てきてもいいかしら?』




その日は、挨拶がてら施設の様子を見に行っていた。

本当は、真っ昼間に訪問して子供たちと遊びたいところだけど、初めて見学に行ったときどうしてか皆んなに大泣きされ、怖がられてしまったのだ。

だから仕方なく、子供たちが寝静まった深夜にこっそり。

まあいいの、天使達の寝顔を見られるだけでも至福のひととき。


ふっふーんと、鼻歌まじりに子供たちの部屋へと向かっていれば、その軽快な足が、園庭に続く縁側でぴたりと止まった。

ふわっと横切った生ぬるい風につられるようにして、ふと、顔を横に向けてすぐ。一点に、釘付けになる。

月の光さえ奪われた真っ暗な闇の中。

ぽつんと灯る、冷え冷えとした青白い外灯に照らされた線の細いシルエット。

誰かが、遊具に寄りかかるようにして立っている。