焦がれる吐息





リビング手前で一度顔を引き締め、彼の手を引いて中に入る。


ガラステーブルの前まで連れて行って、握っていた手を離した。今更もっと飾り付けをすれば良かったな、なんてちょっぴり後悔しつつ。

ちゃんとずっと目を瞑ってくれている百瀬くんに、「そのまま少し待っててください」と告げてダッシュでワインを取りに行く。


鳴り止まない鼓動と一緒に、ひんやりとした澄み渡る色のワインボトルを丁寧に抱き締めて。

彼の前、ガラステーブルの横に静かに立った。


「どうぞ」


私の短い一言に、彼の睫毛がゆっくりと上がり崇高な美を放つ青の瞳が現れる。


そしてその瞳が、分かりやすく見開かれていく。


「……えっと……じゃんっ…」


恥ずかしさを捨てきれなかった台詞が、中途半端に小さくぽそりと落ちた。

自分で思い描いていた可愛い感じの「じゃーん」というのはやっぱり出来なかった。

じわり、耳朶に変な熱を感じながら。

これだけはちゃんと言おうと、テーブルを目にじっと固まる姿に「百瀬くん」と柔らかく呼びかける。


まじわった瞳は、腕の中の液体のようにゆらゆらと美しく揺れている。


その瞳と似た美しい色のワインをもう一度ぎゅうと抱き締めて、静かに微笑んだ。




「お誕生日、おめでとう」