焦がれる吐息





𓂃𓈒𓏸˖°⌖꙳✧˖°✳︎⭐︎★






一輪の淡いピンク色のガーベラを挿した花瓶を手に、キッチンからガラステーブルへとぱたぱたと急ぐ。

花瓶なんてあったかな、と、お花を買ってから気づいたけれど、ケンちゃんが模様替えしたときに置いていった一輪挿しが丁度あって良かった。

まさかこんな形で役に立つ日がくるとは思いもよらなかったけれど。


「……狭い」


一人暮らしだから小さなローテーブルしかなくて、料理や食器が所狭しに並んだ卓上は見事にぎちぎち。


その真ん中に、ちょこんとガーベラを飾ってセッティングは何とか完成。


『ふふ、ピンクのガーベラの花言葉は“感謝”ですよ』


花屋の店主の言葉を思い出して、自然と頬が綻ぶ。


普段お花なんて飾らないけれど、デパート帰り、これは本当に偶々“フラワーショップ みつばち” というレトロなお花屋さんを見つけて「(料理ができない分、少しでもテーブルの見栄えを良く…)」なんて、ふらっと立ち寄ってしまった。


『(花束はやりすぎ感あるかな)』

色鮮やかな花が飾られたショーケースを前に一人悩んでいたら、サンタクロースのような風貌の店主が気さくに教えてくれて。


11月の誕生日花ということでガーベラを一輪選んでみたけれど、まさに今日、百瀬くんへ宛てたぴったりの花言葉になって柄にもなくテンションが上がってしまう。


「……よし」



ワインは百瀬くんがきてから出そう、ほんの少し緊張で震える手のひらを握り締めて、彼の部屋へと向かった。