「……今、なんて?」
平静を取り繕って発したつもりの声が、思いの外、震えて空気にとけた。女子校の進学パンフレットを持っていた指先が、みるみる温度を失っていく。
「だからね、羽柴さんと再婚しようと思って。あんたに話そうと思っても、店に全然顔出さないし。羽柴さんもずっと寂しがってたわよ〜」
「……ハシバっ、て、あのハシバ……?」
「なに言ってるのよ、いつも店に来てくれる羽柴さんに決まってるでしょ?若パパであんたも良かったわね」
「わか、ぱぱ…?」
「ふふ、羽柴さんね、あたしも澄香も一生愛しますって言ってくれたの」
途端に胃から何かが迫り上がってきて、トイレに駆け込んだ。
……いつも店に来てくれるあのハシバ?
卑猥な眼差しで、かわいいかわいいと連呼してきたあの羽柴?
目の前に母親がいるのに、平然と中学生の太腿を撫でてきたあの男?
毎月毎月、もう二年も、盗撮写真を送りつけてくるあの男が、
「(……父親になるの…?)」
便器の中がぐにゃりと歪んで見えた。
羽柴の考えてる事が分からなかった。



