焦がれる吐息




その警戒心を、どうして簡単に解いてしまったんだろうって、今でも酷く後悔してる。

あの時、どうしていれば正解だったのだろう。

あの頃、私はどうしていれば、母も、自分も傷つけずに済んだのだろう。

もっと早くに誰かに相談していれば良かった?

母にちゃんと伝えていれば良かった?

そもそも、お店に行かなければ、あの男と出会わなければ良かったのか。

母のスナックを応援しなければ良かったのか。

それとも、お父さんが他の女に見向きもしないくらいに、私がもっと良い子で、良い家族を築けていれば良かったのかな。

考えても考えても、答えは見つからない。

ただ、私が母の第二の人生を奪って、自分の心が壊れたことだけは分かる。

それは忘れたくても一生忘れられない、空が、焼け爛れた真っ赤な色に染まっていた日。

夜がまもなく訪れようとしていた時。



「再婚しようかと思ってるの、羽柴さんと」



ガン、と言葉の鈍器に殴られたのは突然だった。