「……さっきの、紙袋って…」
大きな紙袋を隠す姿を思い出せば、更に喉奥がきゅうと熱く締め付けられる。
もしかして、私の為に……?そんな自惚れた事を思ってしまえば、心臓も鷲掴みされたように痛くなる。
「……澄香さんが玄関にいると思わなかったんで、結構焦りました」
ビーズクッションの横に腰を下ろした百瀬くんは、どこか恥ずかしそうに私を見上げた。
そして、クッションを優しくトントンと叩く。
詰まる息をそっと一つ零して、クッションに寄り掛かるようにして三角座りをした。
「……どうしてこれを?」
声が震えていないか恥ずかしかった。ぎゅうと縮こまって、天井を仰ぎ見る美しい横顔を見つめる。
すると彼は、ゆっくりと私の方へと顔を向ける。重なる瞳には切なげな熱がしっとりと宿っていた。
「ただ、澄香さんの頭の中を、俺で埋め尽くしたいなって」
百瀬くんはちいさく笑って、また天を仰ぎ見る。
「……夜空が苦手なんだろうなって分かってたのに、俺はいま自分の欲を押しつけてるだけです」
それはあまりにもやさしい横顔だった。
心が震え、じわっと目尻が熱くなったから誤魔化すように私もまた静かに見上げた。
百瀬くんが用意してくれた星空はやっぱり美しくて、どこを見ても穏やかで、ずっと優しくて。
「……今、その欲が、凄く嬉しいなって思っちゃってます」
その輝きが、ぼやけて滲んで見えてしまう。
「……もう、空を綺麗だなんて一生思えないんだって思ってたから」
そう、ずっと私はこうやって、ただ真っ直ぐに空を見上げてみたかった。澄んだ心で、ただ星空を綺麗だなって眺めていたかった。
あと星がみっつよっつ瞬くのを見届けていたら、雫が零れてしまいそうな気がして。
その熱くてくるしい感情を誤魔化すように、そっと潤む瞳を閉じる。
瞼の裏には、簡単に当時の記憶が浮かんだ。
短い細切れの夢のように、醜い過去はいつだって意識に入り込んでくる。



