焦がれる吐息





また捲り、もう一枚。


真新しいセーラー服を見に纏う可憐な姿。

これは、中学の入学式の写真。その表情は、横髪を耳に掛けながら照れ臭そうにはにかんでいる。

愛らしい彼女の姿に、言わずもがな目尻が下がり。

でもこの一枚を目にすると、途方もない切なさ、そして後悔と遣る瀬無い思いに駆られて、胸の中心部が軋む。


この写真以降、スミちゃんの笑顔は次第に撮れなくなっていった。

笑顔だけじゃない。照れた顔も、怒った顔も、泣いた顔も。

"あの時"、"あの事件"から、豊かだった彼女の表情は、過去に置き去りのままだ。



コツンと、ワイングラスを置いて、今さっき触れていたスマホを手にした。しんみりした心のままに、なんとなく写真フォルダを開く。


隠し撮りだったり不意打ちだったり、スマホの中もスミちゃんだらけ。

だって、どの瞬間も本当に可愛くて仕方ないんだもの。ひとりニタニタしながら、最新の写真をタップした。



先週、缶ビール片手に撮った休日の何気ない瞬間。

僅かに染まる夕日がすごく綺麗で、心底嫌そうなスミちゃんを無理やりベランダに引っ張り出したときに撮れた写真だ。


ふわりと靡く濃紺の髪、ロングバングを気怠そうにかきあげて煙草片手にこちらをゆるりと見上げるスミちゃんは、痺れるほどに美しく色っぽい。

粉雪のような真っ白な肌、綺麗な二重の下三白眼、憂いを帯びたアンニュイな顔立ちがスポットライトのような橙色の光に照らされて神秘的だ。


は〜ん、ウチの澄香はなんて美しいの、なんて、うっとりと見惚れて。


でもやっぱり現在の彼女を見ていると、胸がどんより重くなって切なくなって。つい溜め息を吐いてしまう。


煙草なんて吸っちゃって。

似合ってるけど、全然似合ってないのよ。

ヤサグレ澄香め。