何か、話でもあるのだろうか……緊張して落ち着かず、またふらふらとリビングを彷徨く。
なんとなくスマホを取り出してみるも、漫画もニュースも、尾崎のキラキラSNSも頭に入ってこない。
こう言う時に限って、無闇矢鱈と連絡してくるケンちゃんからも音沙汰なし。
そういえば、百瀬くんが代わりに電話に出てしまったあの日から、ケンちゃんは妙に静かになった。
絶対にうるさいほどに事情聴取されると思いきや、【アタシが帰るまで、宍戸には紫月くんとの事は絶対に話さないこと】の一言のみだった。
どうやらケンちゃんは宍戸さんに、私と百瀬くんが一緒に住んでいることは伝えてないらしい。
仮にも百瀬くんは事務所に所属する人なのに、副社長に伝えなくていいのだろうか……なんて思ったけれど、これはケンちゃんの破天荒な計画から始まったことだから怒られるのが怖いのかもしれない。
「(……宍戸さんに会うの気まずいな…)」
———それは百瀬くんとの関係を隠さなければという事もあるけれど……思い倦ねるように行きつく視線の先は、白い封筒を置いた“はず”の場所だった。
そのカウンターに頬杖をついて、眉尻を垂らす。
百瀬くんに視界を奪われ、封筒を下に落とされ、抱き締められたあの夜。
漸く温もりから解放されたその後、赤面したまま急いで拾ったことは、テンパっていたけれどちゃんと覚えている。
そして、後で読もうとまたカウンターに置いていたはずなのに、気づいたらなくなっていたのだ。
百瀬くんに聞いても、桜色の唇を優雅に弓なりに「さあ?」の一言。
もしかしたら自分の記憶違いで、無意識のうちに他の場所に置いたのかもしれない。
前に百瀬くんの事を考えすぎて、眼鏡を掛けているのに眼鏡を探していたくらいだから。(※お出掛け用の伊達眼鏡)
次ジムに行く前にちゃんと見つけなくちゃ、と、またリビングを歩き回ろうとしたところ。
カチャ…と音がして振り返る。
ドアからひょっこり顔を出した百瀬くんは、私を瞳に映すと垂れ目がちな目元を穏やかに緩める。
そして、ちょいちょいと手招きをした。



