焦がれる吐息




「……買い物行ってきたんですか?」


こそばゆい空気に耐えられなかった瞳は、彼の手元、大きな紙袋を捉える。


何だろうと良く見ようとすれば、百瀬くんは「まあ、……」と歯切れ悪く応えながら、私の視線から逃れるように後ろへと隠した。


見られたくないものなのかな、と特別触れる事もなく、くるりと踵を返す。

急に頭の中は、彼へのサプライズでいっぱいになった。


ご飯買って来たので一緒に食べましょう、と単刀直入に誘うべきか。

それとも少し部屋で待っててもらって、急いでテーブルをセッティングして、それから呼びに行くか。

じゃーん!なんて言って、驚かせたほうが嬉しいかな。

頭の中で膨らませてみて、全然キャラじゃないそのイメージに「(うーん…)」と廊下を歩きながら悩む。


男の子に何かをしてあげるのは勿論、サプライズをする事自体も初めてだった。

ケンちゃんの誕生日でも、プレゼント何がいい?って普通に聞いてしまっていたし。逆に友人から自分の誕生日にサプライズを用意されても、先に勘づいてしまって、どのくらいのリアクションをするべきか無駄に悩むタイプだった。


彼には絶対にバレていない自信があるし、やっぱりここは、“じゃーん!”作戦か。


「(……少し部屋で待っててください……うん、これくらいならちゃんと言える。頑張れる。)」



「澄香さん」



意を決して振り向こうとしたそのとき、まさかの先に呼ばれてしまう。振り返れば、彼は自分の部屋のドアノブに手を掛け柔く目を細めた。


「あとで、少しだけ時間もらえませんか?」

「え?」

「呼びに行くので、待っててもらえると嬉しいです」

「………」

「いいですか?」

「……え、あ、はい」


あまりにも優しく意表を突いてきた百瀬くんに、自分の計画が飛んでしまう。

ぽかんと立ち竦む私に、彼は「ありがとうございます」と美しい笑みを咲かせて。ガサゴソと紙袋を鳴らしながら、部屋に入っていった。



「(……どうしよう…お祝い…)」