焦がれる吐息





「やっぱりいないね〜ざんねん……」

「……」

「朝ね、しーちゃんもすきな人にはやくあいたいってゆってたの」

「……」

「だからいそいだのかな〜?」



ケイトはつまらなそうに唇を窄ませて振り返る。

その向こう側、住むというには狭すぎる部屋。

昼間なのに黄昏のように暗いそこは、まるで孤独を閉じ込めたような空間。


その切ない空虚を映す瞳が、訳もなく揺れる。

根拠もないのに、どうしてか、下瞼がしっとり熱くなる。


喉元まで込み上げてくるよく分からない切ない感情のかたまりを、すん、と呑み込めば、馴染みの香りが鼻をついてきて更に心臓が噛みつかれたように痛くなる。


たった4畳半ほどの部屋には、たった三日前まで慣れ親しんでいた煙草の香りが染み付いていた。



「スミちゃん?くさい〜?しーちゃんずうっとお部屋でたばこすってたからな〜でもね、今日ちゃんとゴミかたづけてたからね、えらいんだよ?」



まるで自分の事のように得意げに、ふにゃりと目尻を下げるケイトの前に、ゆっくりと膝をつく。

いつでも輝きを絶やすことのない黒い瞳は、薄暗い部屋のせいでしっとりと静かに艶めいていた。



「……ねえ、ケイト?」



しーちゃんって、


『———紫月《しづき》です。百瀬紫月、19です』


紫月、のしーちゃん?