焦がれる吐息





焦ったい想いをぶつけるように、まだ半分残る煙草を揉み消した。


「……火、また借りていいですか」


唐突にそう訊けば、彼女は驚いたように振り返る。

やっと重なる、美しい下三白眼に静かに微笑んでライターを握る彼女の右拳に触れる。


微かに震える小さな手を、強く握り締めた。



「澄香さん」
 
「、…は、い…?」

「お互い、これで最後の一本にしませんか」

「……え?」



目を見張る彼女の指先から煙草を抜き取って、自身の唇にゆっくりとそれを挟む。

更に大きく目を見開かせた彼女と視線を絡めたまま、“最後”のほろ苦い味を吸い込んだ。


「禁煙しませんか、一緒に」


そして身勝手な煙を吐いてすぐ、躊躇いなく、ぐりぐりと灰皿に押し付けて火を消した。独特な芳ばしい香りが辺りを漂う。



「な、に勝手に……ていうか禁煙って……絶対、無理です。百瀬くんだって、」

「俺は大丈夫です。澄香さんがこれから吸いたくなったら、俺が気紛らわせます」

「……紛らわす…?どうやって、」

眉を顰め、惑う言葉の途中。遮るように、煙草臭い指先をまた細い頸に差し込む。


「こうやって」


くい、と頭を引き寄せ、反射的に閉じられたかわいい瞼の上にそっと唇を落とした。


安っぽい香りじゃなくて、煙草の香りじゃなくて、本当にこの人の身も心も、悲しい記憶も全て自分で染め尽くしたい。はやく、貴女のすべてを手に入れたい。


離れてすぐ、彼女は長い睫毛を何度も瞬かせて固まる。それに静かに笑いかけて、熱く、滑らかな頬を想いを込めた指先で優しく撫でた。



「何度でも、俺が紛らわせますから」