焦がれる吐息





「澄香さんは、いつから吸ってるんですか?」



煙草を灰皿に押し付けた彼女に、静かに問いかける。

「(あともう少しだけ一緒に)」、そんな狡猾な自分をひた隠して美しい横顔を見つめた。

すると、灰皿に落ちていた視線がゆったりと上がる。

けれど、色のない下三白眼はすぐに逸された。

彼女の纏う空気が変わったのは一瞬のことだった。



「……本格的に吸い始めたのはちゃんと20歳から」



「でも、」と躊躇うように一旦言葉を止めた彼女は、また一本煙草を取り出す。

カチ、とライターを灯して淡く浮かび上がったその姿に、途端に胸が抉られるような痛みが走った。

伏せた睫毛を微かに震わせ、けれど煙草を咥える唇の端は不思議なほどに綺麗に上がっている。

まるで強がっているような表情をして、澄香さんはまた夜空を見上げて深く煙を吐き出した。


「……初めて吸ったのは中学三年の終わりです。喫煙者だった母親の鞄から盗んで、こっそり」

「……」

「……一口目って凄い不味いじゃないですか。当たり前に上手く吸えないし。それでも、どうしても煙草の臭い匂いに埋もれたくて……えずきながら馬鹿みたいに吸って。気づいたら空っぽになってました、箱」


「結局、ケンジに見つかってビンタ食らったんですけどね」そう、珍しく饒舌な彼女は、冷ややかな空気に不釣り合いな穏やかな笑みを浮かべた。

そして、美しい唇でもう一度ゆっくりと紫煙を燻らせる。



「……本当、どうしようもないきっかけだった」



最後、聞こえるか聞こえないか。とても小さくて、今にも泣き出してしまいそうな声が、確かに自分の心に届く。


強烈なもどかしさが、湧き起こる。