焦がれる吐息




束の間、互いに夜を眺めながら静かに紫煙を燻らせた。

見つめ続ければ続けるほど孤独を感じるような、星一つない真っ暗な底のような空だった。

いつから独りでここにいるのだろうか。

何を思ってこの夜空を眺めていたのだろう。


また遣る瀬無い切なさを感じていれば、不意に冬の気配を感じさせるような冷たい風が肌を刺す。


「寒くないですか?」

「…いえ、ちょうどいいです。お風呂上がりで熱いくらいだったので」

「珍しいですね、こんな遅い時間に」

「なんか眠れなくて……あ、ボディソープ切れちゃって……百瀬くんの勝手に借りちゃいました」


すみません、入ってから気づいたんです、と。

恥ずかしそうに睫毛を伏せる、その横顔を瞳に、ひたすらに喉奥で愛が高ずる。

気づいたら、また指先が伸びていた。

大切な宝物に触れるように、丁寧に、ほっそりとした頸に指先を掻い潜らせて。

瞠目する瞳に口端を緩めながら、横から小さな頭をそっと引き寄せる。

スウェットから覗く細い首元にほんの一瞬、すんと鼻先を付けた。

「、何、してるんですか」

「確認です」


嘘。触れたかっただけ。

そんな身勝手な言葉を呑み込んで、落ちそうな灰をスタンド灰皿に静かに落とした。

ずっと、あんなにも躊躇っていたくせに、一度触れてしまえばもう歯止めが効かなくなっている。

もっと、もっと、と身体が彼女の温もりを求めてしまう。

嫉妬という感情を覚えてから、余計にその想いが酷くなった。


「……煙草の匂いしか、しないと思いますけど」


彼女は首筋に手を当てながら、濡れたような下三白眼を尖らせて非難めいたように上目で見つめてくる。

また込み上げてくる衝動を煙で誤魔化して、ただ静かに目を細めた。


———いっそのこと、他の男の瞳に触れないように、一生自分の腕の中に閉じ込められたらいいのに。理由なんてなくとも、その壊れてしまいそうな身体をめちゃくちゃに搔き抱けたらいいのに。