言葉にしなくとも苦しげな感情が伝わってきて、無意識にその必死な手の甲に自分の手を重ねていた。
今、美しい顔はどんな表情をしているのか。
私も一緒に胸が苦しくなって気になって、腕を解くように振り向いたそのとき。
そっと、おでこに柔いものが触れる。
その覚えのある感覚に目を大きく見開く。
瞬きたった一つの出来事。
でもそのほんの一瞬に、とても丁寧な想いが込められているような、やさしい感覚。
二人きりの朝、静謐な空間でシーツ越しに感じたものと同じ。
驚き見上げたすぐそこ、今、自分の額に落とされた桜唇を凝視し、漸く理解した身体が熱を帯びる。
そうして艶美なくちびるは流れるように、次に耳輪に触れる。瞬間、感じたことのない擽ったさに目蓋をぎゅうと閉じる。
「幾らでも、他の男には鈍感でいてください」
「、」
「でも、俺には鈍感にならないで」
百瀬くんは私の耳に柔く口付けを落としたまま、懇願するように囁いた。
直接吹き込まれる切なげな音に、また未知なる擽ったさが身体を駆け走る。



