すると隣から、ふーっと肺の底から吐き出すような深い溜め息が聞こえてきた。
まるで気を鎮めるようなその吐息に、ちらと横目で確かめれば、彼は膝に肘をつき項垂れるようにして俯いている。
金の髪から覗く横顔は、大きな片手のひらに覆われていて更に表情が見えない。
その姿にさあっと焦りが背筋を走り、瞬時に立ち上がった。
「(まずい、)」
タタタ…!と大慌てでキッチンに向かう。
私の発言か無意識なハートの目で、吐き気を催してしまったのかもしれない。
取り敢えずお水を用意しようと、冷蔵庫に行くその手前。
タイミング悪く、着信音が響く。
ちょうど通過しようとしていたカウンター上、白い封筒の横で置きっぱなしだったスマホが震えていた。
画面の表示に眉間を寄せ手を伸ばそうとすれば、うさぎを抱えたままだったことに漸く気がつく。
咄嗟にその子を脇にむぎゅと挟み、荒々しくスマホを耳に当てた。
「何いま緊急事態なんだけど」
『え…?!どうしたのそんなに苛立って?!というか、スミちゃんが急に切ったんじゃない!!』
「ごめん、切る」
『ちょまって!こっちも緊急事態なのよお!』
ケンちゃんの泣きべそのような馬鹿でかい声は、百瀬くんの方まで漏れているのではないのかと思うほどだった。
けれど、今はそれどころではなくて「何」とむすっと返す。百瀬くんが気が気じゃなくて、ケンちゃんのくだらない電話に付き合ってる暇はない。
すると機械越し、一度、大きく息を吐く音がした。
なんだか皆んな溜め息ばかりで、眉がきゅと下がる。



