彼が、こちらを向いたような気配がする。
それでも、やいやい茶番を繰り広げる煌びやかな世界に反抗するように静かに言葉を紡ぐ。
「だって、この俳優、実際はクズ野郎かもしれないし。画面越しになんて、本当の性格は分からない。この人がどれほどの努力をしてきたかなんて私は見てないし知らないから、やっぱり興味ないです」
頬杖をついたまま隣を見上げてみれば、案の定、百瀬くんと瞳が絡む。
瞠目している青い瞳に、思わず口端をちいさく上げた。
「そんな人よりも、毎日手が荒れるほど早朝から深夜まで働いて。自分の誕生日そっちのけで、雨の中走り回ってくれる。身近で、そんな直向きで優しすぎる努力を知ってしまってるので、」
「……」
「私にはその人の方が、よっぽど魅力的に見えちゃいます」
ずっとむずむずしている心から、つい零れる。
「私は、百瀬くんに興味があります。」
彼が、息を呑んだのが分かった。
それにハッとして、背筋をぴんと伸ばす。
“———熱烈アプローチをしないスミちゃんに対しては苦手意識を抱かないって事ね?”
大変だ、百瀬くんのアレルギー反応がでてしまう。
ケンちゃんの言葉が、透かさずまた頭の中で警告を鳴らす。
時が止まったかのように固まる彼に、慌てて目を逸らした。
「いや、深い意味はないです。男とか女とか関係なく、人間的にってことで……」
語尾を萎ませながら、恥ずかしさまるごと抱き締めるように、うさぎを胸にぎゅうと押しつける。



