焦がれる吐息





ふと、視界の隅にあったドレッサーの鏡に映る自分と目が合う。言われたとおり、その表情はむすっと顔を顰めた感情剥き出しな顔をしていた。


適当に纏めたヘアスタイル、ダボっと大きいモカ色のパーカーに黒スキニーで完全休日スタイル。

好きな時間に起きて、好きなことをして、自分のことだけを考える。

誰にも干渉されない自由なテリトリーの中で、ぬくぬくと殻に閉じこもる。それが、私の幸せ。


だから、克服なんてしなくていい。


平和な女子高を卒業後、大学は学びたい分野のために泣く泣く共学になってしまったけれど、それでも必死に男を避けてきた今。

このまま一生、男と関わらずに生きていくつもりだった。


そんな情けなくとも必死な私の未来像を、『だって〜〜ん』とウネウネとした声が壊しにかかる。


『彼、行く当てがなくて困ってたんだもの。これは治療のチャンス!ってピンときて。従姉妹の家に空き部屋あるから一先ずそこに住みなさいって、一か八か鍵渡してみたの』

「なに勝手に」

『いやあのね、アタシも断られると思ったのよ?でも、すんなり頷いてくれたからもうびっくり!女の子よって伝えたのに!!』

「……それは何故?」

『さあ?アタシはスミちゃんの名前以外はなにも教えてないの。理由は本人に聞いてちょうだい』


ケンちゃんのせいで、頭の中ではまた、彼の声が自動再生されて懲りずに胸が騒つく。

抗うようにむっと唇をひん曲げた時、『ねえ、スミちゃん』と優しく語りかけるように先回りするケンちゃん。