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気を紛らわせる為にテレビをつけた。ほぼ無音だった空間に、どっと賑やかな笑い声がたちあがる。
画面を華やかに独占するのは、今世間を賑わせている大人気俳優だった。深夜の新トーク番組なのか、その男の自宅映像をワイプの中でタレント達がわいわい褒めちぎっている。
確か、ケンちゃんの事務所だった覚えのある顔を眺めながら缶ビールをちびと飲む。
いつもだったら爽快となる喉越しも、今はやけに重く感じた。
「さっきの、食べないんですか?」
「……色々といっぱいなので」
私の返事に不思議そうにぱちくりと目を瞬かせた百瀬くんは、タオルでわしゃわしゃと頭を拭きながら私が座るソファーに腰を下ろした。
拳ひとつ分しか開いていない近距離に、透かさずぴょんと心臓が跳ねたけれど、すぐにテレビへと意識を集中させた。
いつもパーマがかったようなふわりとした金の髪はまだほんのり湿っていて、潤いに満ちた輝きを放っている。
お風呂上がりの彼は艶やかさを増していて、官能美がしっとり溢れるその姿を直視できなかった。
「……百瀬くんは?食べ物とか飲み物」
「じゃあ、澄香さんと同じのを」
見ないように、見ないように、と心の中で唱えて。
けれど当たり前のように返ってきた声に、思わず非難を双眸に集めて、大人びた美しい顔を斜めに見返してしまう。
「だから、未成年じゃないですか」
煙草を見逃しているから今更だけれど、一応年上としてそう易々と渡せないと、むっと眉を顰めた。
冗談半分、彼と肩を並べて座ってる気恥ずかしさを少しでも誤魔化す為でもあった。まさか、百瀬くんとリビングで過ごす日が来るなんて思っても見なかったから。



