『……手紙ってどんなの?本当にアタシに?』
———“「これはですね、その、ぜひ…!」”
珍しく取り乱したような宍戸さんが何か言っていたけれど、百瀬くんからの着信で吹き飛んでしまった、なんて言えない。
それに、つい彼の声に気を取られて、宍戸さんがいつの間にか立ち去っていた事にも気づかなかったなんて失礼な事、もっと言えない。
「サイズ的に、よく商品券とかチケットが入ってる細長い封筒。ケンちゃんしかいないでしょ?」
『……ちけっと…?あのデジタル人間が態々なぜスミたんに……』
恥ずかしい失態がバレないようにさらりと当たり前の事を伝えれば、ぶつぶつと考え込み始めたケンちゃん。
細長いそれは封はされていないけれど、勿論礼儀として触れない。データでは送れないほどの超機密情報だったら大変だ。
確かに私を介して渡すのは不思議だが、海外にいるケンちゃんにはすぐに渡せないから一番身近な私に預けたかったのかもしれない。
帰ってきた時に渡しそびれないようにと、封筒をまたカウンターのよく目につく所に置く。
『え、まってどうしようスミちゃん…!!』
「なに今度は」
唐突な慌てた声を片耳で受け止めながら、漸く戸棚に手を伸ばす。背伸びをしてやっと開けられるそこは、いつも踏み台を使ってではないと物を出し入れできない。
『宍戸ってさ、もしかして、え、え』
「よいしょ」
つま先立ちで扉を開けてみて、すぐに眉を顰める。目当てのカップ麺は、届きそうで届かなそうな一番上だ。
『ねえ、スミちゃん…宍戸ってもしかして、アタシのこと、その……好きなのかしら…?』
「は?てかケンちゃん、なんでわざわざ一番上に隠すの。微妙に届かないんだけど」
『どうしよう、きっとアタシに直接渡したくて、でも渡せなくて、それでスミちゃんに……』
「(踏み台もってくるの面倒くさいな)」
ちぐはぐな会話を繰り広げながら、スマホ片手に「うーん」と精一杯腕を伸ばす。
指先も脹脛も、ぷるぷる限界を訴えている。
「(あと、ちょっと、)」
「———危ないですよ」
不意に、真後ろから覆い被さるようにして、長い腕が伸びてきた。



