けれど先に響くのは、私の声を見透かすような、より一層に優しげな声だった。
『これはもしかして花丸達成してたのかしら?』
「違う、」
『まあ二人の間に何かあったのは確かね、ふふ』
「……」
『紫月くんにとって治療になるかどうかは分からないけれど、スミちゃんにとってはどうかしら?アタシは、良い方向に効果が出てると思うんだけどな?』
「それは、」
意地悪な言葉に、また胸の真ん中にモヤモヤの渦が巻いて、まだ完全に沸騰していないのに小鍋の火をカチャン…と消してしまった。
———良い方向に、いってるのだろうか。
確かに、百瀬くんは怖くない。苦手じゃない。
だからといって、世の男が大丈夫になったか?と聞かれれば答えはNOだ。
きっと百瀬くんだから、大丈夫なだけであって。
私にとってもこの治療は意味がない気が……。
『ほらほら、今のうじうじしてるスミちゃん、何だか凄く女の子らしくなったものね。あーん、ますます早くスミちゃんに会いたくなっちゃった』
「何うじうじって、そんなのしてないんだけど」
『いやん無自覚!歯切れ悪く話しちゃってさ〜?いつも日本刀振り翳すみたいにスパンッ!と話すスミちゃんが「……だって…それは…」なんて!きゃ〜ん、うじうじかっわいい〜』
ケンちゃんのふざけた煽りに、たった今の切ない気持ちも、モヤモヤの渦も見事に吹き飛ばされ、むかっと唇をひん曲げる。
「もう知らない。ケンちゃんのデカ盛り味噌コーン食べちゃうからね」
『ええっ!?それはアタシが帰国したら食べようと思ってるやつぅ!』
「人の家にストックしてるのが悪い」
『スミちゃんの家で食べるから美味しいのよ〜』という謎の言い訳を聞きながら、話題を逸らせた事にほっと溜め息を吐いた。
張り詰めた胸から溢れでるように出たその吐息は、何色か。まだ、自分でも不透明な事ばかりだ。



