そんな私の鼓膜を、くすくすと場違いな笑声が刺激してくる。
「なに」と眉を寄せればケンちゃんは『スミちゃん気づいてないでしょ?』とまた一人で勝手に愉しそうにするから、眉間の皺が更に深くなった。
「……何が?」
『今話しててね、スミちゃんがどんな表情をしてるのか手に取るように分かったわよ?顔を見て話していても、何を考えてるのかちっとも分からなかったのに』
思わず首を傾げ、眉が下がる。
どんな表情をしていたのか…なんて知らない。でも、いつものケンちゃんのペラペラ話を、いつものように適当に聞き流せなかった。
正直、あまり聞きたくなかったかもしれない。百瀬くんと他の女の状況なんて、ただ、胸が萎むだけだった。
「まさか、態と要らない情報話してたの」
『ふふ、どんどんシュンと萎んでいくスミちゃんの声があまりにも可愛くって』
「……悪質」
『ごめんごめん。でもスミちゃんがまともに男の子の名前を呼ぶのも、こうやって話すのも初めてじゃない?頭の中に男が存在するのすら無理!考えたくもない!って感じだったのに』
柔らかに紡ぐケンちゃんの言葉に「……知らない」と素気なく答えた自分の耳朶が、羞恥でじわりと熱くなる。
なんだか居心地が悪くなって、もう話題を逸らそうと前髪を乱雑に掻き上げた。



