飲み会があったあの日から、やっぱり熱があった私は丸二日間ほど本調子が出なかった。
そんな私を心配して、百瀬くんは態々仕事を休んでくれた。
大したことではないと言ったのに、料理は勿論、掃除も洗濯もしてくれて。私が少しでも動こうとすれば「ゆっくり休んでてください」と、ベットへ強制送還。
助かった反面、彼に尽くされる事がとても面映かった。
お風呂掃除を黙々としてくれる彼をこっそり盗み見て、ひとつキュンと胸が高鳴って。
キッチンに立つ姿、お洗濯物を丁寧に畳む姿をちらちら見かけては、またひとつ、ふたつキュンと胸が高鳴って。
嗚呼、本当に百瀬くんと一緒に住んでるのか、なんて今更な事を漸く実感して心臓がキュウッと最高潮に縮んだ。
そうして、ぱんぱんに高鳴りを詰め込まれた胸の苦しみから逃れるために、溜め息を幾重にも重ねた。
「———ねえ、ケンちゃん」
もう、花丸とか、お赤飯どころの話ではない。
でも、ケンちゃんには言えなかった。言えない、というより、上手く説明できない。自分でも今の状況がよく分からなかったから。
ただ、一つだけ言えるとしたら。
「この治療、意味ない気がする」
ぽつんと。愉しそうなお喋りを止めたその声は、不本意にも寂しげな音となって独りきりのキッチンに響いた。



