……あのクソ餓鬼に対して、今この場では心底どうでもいい疑問を抱いたのが最後。百瀬紫月が、俺の女神に関われるはずがない。
「(じゃあ一体、どこのどの“ モモセ”だ)」
「……あ。あの、」
思考を飛ばしていた俺を呼び戻したのは、悲しいほどに甘く澄み通った声だった。ハッと見遣れば、当たり前のようにその声は俺宛てではない。
まだ通話中の彼女はほっそりとした白い首筋をそわそわと掻き、恥じらうように睫毛を震わせる。
そして意を決したように、柔らかそうな下唇を一度むぎゅと噛んでから。
「……先日のお礼というか、お詫びというか…ちゃんとしたいので、考えておいてください」
———その後のことは、よく覚えてない。
ただ、愛を込めた白い封筒は彼女の手元に残し。
最後に切ないほどに脳裏に刻まれた、未だかつて見た事のない女神の可愛くて可愛くて、兎に角可愛い表情、声を胸に。
「また、厄介な仕事ができてしまった」
蔓延るどす黒い感情を漏らすように、大きな溜め息を吐いた。
「———早急に排除せねば、“モモセ” 」



