女神の為だったら得意の頭を使い、人を使い、肩書きを使い、何だってした。
運動なんて毛嫌いしていたが、彼女が事務所のジムを利用し始めると聞いた時は、即座にスポーツ用品を揃え、筋トレの一般書を買い漁り、栄養学、筋トレ理論、トレーニング知識を頭に叩き込んだ。
警備員室には、彼女がジムを利用する時間帯は誰一人として入れないようにと指示を出し、二人きりになれる空間をつくった。(勿論社長には内密で)
若手俳優が澄香さんに一目惚れをしたと聞きつけたのならば、海外に飛ばしたこともある。(語学留学をした方がいいと適当な理由をつけて)
終いにはマネジメント契約書に、事務所社員及びその身内とは恋愛を禁ずるという規約を記載するようにもした。
違反した者には、重い罰則を科すとも。
これは男性が嫌いな彼女の為でもあり、自分の為でもあった。自分が知らぬ間に【スターと密かな恋♡】などといった、少女漫画的な展開になることを恐れ、ライバルになり得る人間を事前に潰したかったからだ。(契約に関して適当な社長は把握していない)
そうして彼女に近づく邪魔な者は徹底的に排除し、表では社長の隣で真面目に、紳士な姿勢を維持していれば、澄香さんはニ年目でやっと瞳に映してくれるようになり、三年目で声を出して挨拶を返してくれるようになった。
このまま何年掛かってもいい、少しずつ信頼を積み重ね、他の男とは違うと思って頂ければ……。
そう我慢の我慢に我慢を重ねていた俺に、思ってもみないチャンスが訪れたのは突然だった。
過保護な社長の、海外出張による一ヶ月もの不在だ。



