焦がれる吐息





逃げ出せそうもない百瀬くんの腕の中、苦しい息を密かに吐いた。細く小さいそれは、熱く、情けないほどに震えていた。



「……昨日は、“ 今だけ”って言ったのに」

『———今だけは、許してください』


私の頭に擦り寄る感覚、懇願するような言葉。

刻まれた熱をぶり返しながら、耐え難い空気を少しでも変えるように唇をむっとさせてみる。すると百瀬くんは、まるで離さないとでも言うように腕の力を強くした。



「……“ これからも” に訂正で。」

「…っ…い、やだって、言ったら?」

「嫌ですか?」

「……今日の百瀬くんは、なんだか一段とタチが悪いですね」

「澄香さんには負けます」

「……いじわる」

「どっちが?」



百瀬くんが静かに笑う振動を感じながら、目蓋を閉じる。


正直に言えば、全神経がもう限界だった。

“今”だけは彼の言う通りに、暫く静かに熱に浸った。

朝一番に吸わなければ気が済まなかった煙草の事なんて忘れて。男の前で必ず纏っていた煙の鎧なんて、今はどうでも良くなっていた。


只管に今は新鮮な柔い香りで胸一杯で、私の内には百瀬くんだけが充満していた。