焦がれる吐息




泡沫のように繊細で、瞬きたった一つの出来事だった。でもそのほんの一瞬に、とても丁寧な想いが込められているような、やさしい感覚だった。


きっと手ではないその未知なる柔いタッチに、我を忘れてシーツの向こう側の世界を凝視する。


彼が近づいたことによって、絆されるような穏やかな香りがあたりに揺動していた。いつもの煙草の香りではない、百瀬くん本来の香りに胸の真ん中が余計にきゅうっと痛くなる。



「……今、何を…?」



彼がまた私の足元付近に腰を下ろした気配を感じとって、シーツの中でモゾモゾと聞いてみた。でも返ってくるのは静寂のみ。「百瀬くん…?」と呼んでみても、返事をしてくれる気配がない。


訳が分からず、訝しげに眉を寄せてシーツをそろそろと顔半分まで下げてみる。

すぐさま待ち伏せていたように口端を緩めて、柔い笑みを溢す彼と目が合う。


「やっと顔見れた」


つい漏れてしまったような、嬉しそうな呟き声が容赦なく胸を擽った。途端にかぁあっと頬が燃え上がった私は、「あ」と焦った声を上げてまたシーツを被ろうとした。

けれど、透かさず百瀬くんはそれを制する。


「駄目ですよ、もう」



私の足元のシーツをくいくい引っ張りながら宥めるように首を傾げる。そして。


「すみません、さっきのは冗談です」


徐々に強くなっていく朝の光は、部屋の中すべてを青々と美しく透き通らせていた。その中でどこか儚げに映える彼は、慈しむように私を見つめる。