焦がれる吐息





不意に背後でスマホの振動音が鳴り、弾かれるように振り返る。サイドテーブルを目にした私は、その目を大きく見開き固まった。


そこには、充電器が差し込んである自身のスマホとミネラルウォーターのボトル、飲みかけらしきコップ、そして市販の薬の箱があった。


スマホを充電して寝た記憶も、勿論ない。

いや、酔っ払った私がまともに充電なんて出来たことがない。

いつもだったら鞄やポケットに放置。充電切れがお決まりで、やっと復活した昼頃に「おいゴラァ!心配したじゃないのお!」とケンちゃんによく泣き怒られていた。

ミネラルウォーターだって、酔っ払っていたら一々コップなんて使わない。直飲みしちゃうガサツなタイプだ。


薬だって、見覚えのないもの。

冷えピタなんて、家に常備してない。




「(明らかにそう、これは……———)」



霞んだ頭の中に、漸く温かな記憶が降りはじめる。夜を駆け抜けた時とはまるきり違う、優しい雨のようにぽつりぽつりと。


———その時。



「……澄香さん?」



はっと顔を戻せば、とろんと、いつもより弛緩した表情の彼と目が合う。朝日に潜む朧げな瞳は、海底に差し込む儚い光を浴びているような神々しさがあった。


「良かった、」


瞬間、ギシリとスプリング音が鳴った。



「……昨日より、顔色良いですね」



こちらに身を乗り出すようにしてベットに手をついた百瀬くんは、しなやかな指先をこちらに伸ばす。