焦がれる吐息





女性はこちらに小さく会釈しながらも、その視線は食い入るように彼の横顔に。ほんの僅かな時間でも、彼に見惚れているのがすぐに分かった。



彼は、まるでその眼差しを遮断するように、長い首に片手を当てて深く俯く。




「———中、入りますか」



そんな姿を瞳に映したら、勝手に唇が小さく動いてた。

普段だったら男に絶対に口にしない言葉が、どうしてかこの時、自然と口からこぼれたのだ。



……いや、このまま部屋の前で突っ立っていられても迷惑だし、そもそも頭抱えるほど女が苦手なら拒否ってそのまま帰ってくれるかな、って……



「すみません、」



ほら、やっぱり———



「……お邪魔、します」


静かな返答と同時に、鼓動がふわっと脈打つ。

自分から提案したくせに、予想外で内心驚いた。

俯いているせいで前髪に隠れている彼の瞳が、どんな表情をしているのかは分からない。



「………どうぞ」

「………どうも」



密かにドギマギする私と、静かに頭を下げる彼。

死ぬほど男が嫌いな女と、碌に会話もできないほど女が苦手な男がいま、同じ空間にはいる。

いま分かることはひとつだけ、この人は怖くないような、なんとなくそんな気がした。