焦がれる吐息





𓂃◌𓈒𓐍


赤色、黄色、青色、色とりどりの提灯ランプが淡く灯るエキゾチックな空間に、鈴のような可愛らしい笑い声が転がる。


「さすが尾崎さん、こんなお洒落なお店あったんですね〜」

「でしょでしょ〜映えるでしょ〜」


こと、とベリー色のカクテルグラスをテーブルに置いた尾崎は、曼荼羅柄の鮮やかな赤色クッションを抱き締めてご満悦な笑みを浮かべる。

尾崎が先頭となってやって来たのは、本格的なエスニック料理が楽しめるお洒落なダイニングバーだった。

飲み会といえば安い居酒屋チェーン店を思い浮かべていた私は、思考回路さえも女らしさがないのだろうか。

座り心地の良いソファーの隅、ビールジョッキ片手にぼうっとしていれば、ぐでーんと肩に重みが乗っかる。

「スミせんぱい良い香りする〜あ、おかわりですね〜はいピンポーン〜」

「……尾崎、もう酔ってるの」


開始一時間、既に尾崎はふにゃふにゃだった。

赤ちゃんのようなほっぺを真っ赤に染めて、どんな話にもへらへら笑っている。

ゆったり寛げる個室なのが幸いだった。私が思い浮かべていた居酒屋だったら、すぐに尾崎は変な虫に目を付けられてしまう。


「恋愛トークしましょうよ〜スミしぇんぱーい」

「……」

「わたし〜スミしぇんぱい泣かせたら〜たとえイケメンでも許しませんからねえ!ふふふ」

「……とりあえずそのグラス置きな」


一応アンタ幹事じゃないの?と呆れながら、目の前に座る新人の子に「ごめんね」と苦笑いを向ける。今は早番組、後から中番、遅番と上がったスタッフが順次合流することになっていた。

全員揃った頃には尾崎は完全にできあがってるだろう。そろそろ店は閉店作業の時間だろうか、と残り僅かなビールに口をつけながらスマホを手にする。


時刻を確認しようと、ぽんっと、画面をタップして、


「ごほっ…?!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「もうスミしぇんぱ〜い何やってるんですか〜」



お絞りを差し出してくれる心配げな声も、ケラケラと笑う尾崎の声も、急に何も耳に入らなくなった。


【今日、夜ご飯一緒に食べませんか】



一件の新着メッセージと、“百瀬紫月”、その名を目にした途端に心が馬鹿みたいに騒ぎ出す。