彼女はただじっと、何かを伺うように見つめてくる。潤んでいるような濡れた三白眼が、心を狂おしくさせそうなほどに突き刺さる。
平常心を保つために一度、彼女の袖から手を離した。
“触れるのも躊躇うくらい、すべてが綺麗”
そう言った癖に、本当は、返事も聞かずに今すぐにでも彼女の手を掻っ攫ってしまいたかった。
それどころじゃない。
ほっそりとした肩、美しい身体の曲線、瑞々しい肌、色艶のある唇、甘美な香り。女特有が無理だったはずなのに、澄香さんにしかない女性らしさ一つ一つ、如何わしい瞳でしか見たことがない。
抱き締めたい、齧り付きたい、乱したい。
そう、常時、欲情している。
衝動に駆られそうな拳を握り締めて必死に耐え忍べば、不意に、彼女は目を逸らした。
シルクのように滑らかな髪ははらりと流れ落ち、美しい横顔は隠される。
「……私、一応、女なんですけど」
同時にぽつりと落とされた小さな声は、上手く聞き取れなかった。「…何て?」と首を傾げれば、彼女は静かに溜め息を吐く。
「百瀬くんのアホって、言ったんです」
「、」
拗ねたような、唐突なかわいい悪態とともに、澄香さんは完全に背を向けて一段階段を下りた。
そして、
「……もう、勝手にしたら」
面倒くさいふりをしながら、下から手を差し伸べてくれる。素気ない言葉とは裏腹に、声は恥じらうようにか細く。手は、微かに震えていた。



