焦がれる吐息





目頭が熱くなってしまうほどに、弱々しい表情。

胸の奥がツンと切なくなって、不謹慎にも愛おしさが突き上げてきた。

無性に、彼女を抱き締めたくなった。

こんなにも、誰かを抱き締めたいと思う日がくるとは思わなかった。


澄香さんは、初めからずっと、只管にかっこよくて。他人想いで、慈悲深くて、どこまでも美しく。

そして、勝手に強い人だと思っていた。

理由も事情も分からない。

でもきっと、本当のこの人はとても不器用で強がりで、誰よりも脆く弱い。


一歩、彼女の元へと行こうとして、でもすぐに踏み止まった。

何と名乗ればいいのか分からなかった。施設にいる者です、なんて言えない。彼女にだけは同情されたくない、真っ新で見られたい。

胸の内を満たすもどかしい気持ちを落ち着かせるように、一つ、溜め息を吐く。それは、熱く焦がれた色をしていた。

近づくのなら、着実に近づきたい。確実に欲しい。じゃあ———

キャップの鍔を下げながら、店内に入る。

徐に、スマホを取り出した。

一度も開いたことのない、【三輪健二】のメッセージをタップする。何十件も溜まっている内容は碌に読みもせず。

一番最後、《どうか話だけでも!!》という文に、躊躇うことなく《はい》と返した。

———じゃあ、今までの全てを覆して、見合う男になればいい。途方もない憧れは、呆気なく、身の程知らずな愛に変わった。

彼女が大切に想う人から認められれば、自分のことを見てくれるのではないだろうか。弱い彼女も含めて、余すことなく愛せるのではないか。



———応えた理由なんて、そんな狡猾で不純でしかないと言ったら貴女はどう思うだろう。