それから自室に戻ってすぐ、引き寄せられるように出窓の前へと立った。
一度も触れたことのない白いカーテンへ、そっと指先を伸ばす。レースの網目から零れる光の粒が、醜い手を白く浮き上がらせた。
ゆっくりとカーテンを開ければ、徐々に、淡い光が空間に溶け込むように広がる。柔い眩しさに、下瞼がしっとりと熱くなった気がした。
そして、確かな心音に包まれながら窓を開けた。透かさず吹き込む生ぬるい風に、カーテンが緩やかにそよいで、ふくらむ。
『(………見えた)』
雲ひとつない澄み切った青空の下。
沢山の子供たちに囲まれた彼女を真っ先に瞳に映せば、妙な安堵感と喜びが全身を押し浸す。
優しげな顔で、ケイトが乗るブランコを押していたり。仏頂面で、小学生達と漫画を読み始めたり。
なんて事ない光景だった。けれど、子供たちと遊ぶ彼女の飾らない姿に時間も忘れて魅入った。
この日から、彼女は不定期に園にやって来るようになった。毎回必ず、『ケンジからのプレゼント』と子供達が喜ぶものを片手に。週に二度のときもあれば、二週間経ってもこない時もあった。
気まぐれにふらっと現れた日は、思わず頬が緩む。来ない日が続けば、無意識のうちに深い溜め息を零す。
仕事中でも、彼女が来たと子供たちの騒ぐ声を拾えば、こっそり縁側に行って目映い姿を探す。
いつの間にか出窓に灰皿を置いて、紫煙を燻らせながら外を眺めるのが日課になって。いつ来るかどうかも分からない彼女を、待ち焦がれるようになった。
特別なきっかけなんてない。
初めから当然のように、
とても穏やかに惹かれていった。



