焦がれる吐息




ここはケンちゃんが契約してくれたセキュリティが充実したマンション。私は一人暮らし、そして、合鍵を持ってるのはケンちゃんひとりだけ、

だから、


———あれ、ケンちゃん忘れ物かなって。


一瞬止まっていた思考に当たり前のようにそう浮かべて、突っ立ったまま。


カチャン…と響く解錠音のあと、ゆっくりと開かれていくドアを見つめて、そして。



「……え、」

「……え、」



小さく漏れた声が、ぴったりと重なった。



———ケンちゃんじゃ、ない。



見上げるほど高いところにあるのは、パーマがかったふわふわ金色の前髪から覗く見開かれた丸い瞳。

まるで瞳の中に宝石を閉じ込めたような、青みの強いグレー色の瞳とまじわったその瞬間、一瞬にして私の時が止まった。