「…いや、わかるけど。てか何かあった?お前が大声出すなんて珍しすぎる。」
これには流石の環も引いたようで、声を潜めて苦笑い。僕もバツが悪くて、ずり落ちてもいない眼鏡を指で上げて直すフリをして咳払いした。
「…別に、何もないけど?」
追及を逃れるようにテキストを持ち直して読むのを再開する。環はまだ訝しむように「ふーん?」と唸ってこっちを見ていたけど、教授の登場に大人しく講義へと意識を向けていった。
次の日には、やっぱり雪はほとんど消えていた。
今日の授業は2講目から。いつも通りの景色に戻った通学路を、余裕を持ってのんびりと歩きながら、僕は結局今日まで引きずってしまったキテレツ女のことを考える。
舞い落ちる雪に吸い込まれそうな、儚い裸足の白い少女。
…うん、確かに|《雪女》だったのかもしれない。
オカルトなんて非現実なもの、信じているわけじゃないけどそっちのほうがしっくりくる。むしろそうであってくれ。
高い柵に囲われた大学の壁に沿って歩き、それが途切れた仰々しい門から敷地の中へ入って行く。いつも通りの寂しい銀杏並木にホッとして、校舎を目指して迷いなく歩いた。
「あっ!」
ようやく校舎が見えてきた時、鈴の鳴るような声と共に、見えてはいけないものが、数メートル手前からこちらに向かって走ってきた。
これには流石の環も引いたようで、声を潜めて苦笑い。僕もバツが悪くて、ずり落ちてもいない眼鏡を指で上げて直すフリをして咳払いした。
「…別に、何もないけど?」
追及を逃れるようにテキストを持ち直して読むのを再開する。環はまだ訝しむように「ふーん?」と唸ってこっちを見ていたけど、教授の登場に大人しく講義へと意識を向けていった。
次の日には、やっぱり雪はほとんど消えていた。
今日の授業は2講目から。いつも通りの景色に戻った通学路を、余裕を持ってのんびりと歩きながら、僕は結局今日まで引きずってしまったキテレツ女のことを考える。
舞い落ちる雪に吸い込まれそうな、儚い裸足の白い少女。
…うん、確かに|《雪女》だったのかもしれない。
オカルトなんて非現実なもの、信じているわけじゃないけどそっちのほうがしっくりくる。むしろそうであってくれ。
高い柵に囲われた大学の壁に沿って歩き、それが途切れた仰々しい門から敷地の中へ入って行く。いつも通りの寂しい銀杏並木にホッとして、校舎を目指して迷いなく歩いた。
「あっ!」
ようやく校舎が見えてきた時、鈴の鳴るような声と共に、見えてはいけないものが、数メートル手前からこちらに向かって走ってきた。



