派手好きな環にしては珍しいグレージュのコートの落ち着いた色味に映える、明るいレッドブラウンの髪色は、見る度にアホっぽいと思う。環の感性は違うようで、色を入れた時「似合うだろ?」と得意げだった。

「あっ、香奈さーん!明日、よろしくねー!」

学生ホールに入るなり、環はすれ違った派手な服装に似合わないウェーブがかった長い黒髪の女に愛想よく手を振る。香奈さんと呼ばれた彼女は環に向かってはにかんだ笑みを見せながら、「よろしく」と返して通り過ぎて行った。

「2年生の先輩でさ。最近紹介してもらった。」

環は顔が広い。うちの大学は敷地内に幼稚園や病院まであり、バカみたいにデカくて人も多いのに、いろんな学部に顔が利くんだから驚くばかりだ。…まぁ、僕と仲良くしてる時点でそのコミュ力の高さは証明されてるようなものなんだろうけど。

「悠人も来る?明日の合コン。看護学部の女子だぞ〜。将来の白衣の天使♪」

いちいち人に声をかけて立ち止まる環を待ちきれず、先に歩き出した僕の両肩に手をかけて歩きながら、環は楽しそうに笑う。


「面倒くさいからパス。夜から雪も降るみたいだし、家で大人しくしとく。」

環の手を振り払い無機質に答えて、ブーブー何か文句を言っている彼を無視して講義室に入った。