雪の精霊

両親にはしこたま怒られて勘当されかけた。仕送りも停止されて、それでもバイトと受験勉強に明け暮れて、なんとかここまでくることができた。

「カッコいいよ、悠人。あと、白も似合ってる。」

アイボリーの春ニットを指差して、環はカラッと明るく笑った。

「どーも。じゃ、僕は研究室行くから。」

「心臓病に詳しい先生に師事してるんだっけ?頑張れよ!」

卒業証書を振りながら、環は僕の背中に向かってそう言った。


梅の花は綺麗に咲いて、桜の木の芽は膨らんでいる。風は春の匂いを運ぶ。

君と過ごした冬が、今年もまた過ぎていく。


それでも僕は立ち止まらない。

君に人生を捧げたのだから。




これは、つまらない僕と輝く今を生きた君のお話。



次に君と会った時、「面白かった!」と褒められるよう僕は精一杯生きていく。



今日も窓から君は僕を見ているんだろ?



暖かい春の日差しの中で、僕は背筋を伸ばして歩いた。





雪の精霊【完】