雪の精霊

眼鏡に積もった雪を払うと、滴り落ちて目に入る。だから、涙が溢れたんだ。


雪は空から降ってきているはずなのに、ずっと見ていると逆に空に舞い上がっているように見えてくる。
いっそ、このまま僕をユキのところへ連れて行ってくれたなら…。



“そんなにつまんないなら君の人生、私にちょうだい!”



目を瞑ったその瞬間、ユキの声がバチンと僕の脳味噌を叩いた。
驚いて起き上がって辺りを見渡すけれど、人影1つなく静まり返っている。

でも、さっき確かにユキの気配を感じたんだ。


なぜだかわからないけど、胸がドキドキして熱くなる。
ユキがいつもしていたように、そっと胸に手を当てて握りしめて目を瞑る。

しばらくして徐に立ち上がり、全身に積もった雪を雑に振り払って僕は決意を胸に歩き出した。





そうだよ、ユキ。
僕のつまらない人生なんて、全部ユキにあげればいいんだ。