雪の精霊

鉛色の空から、次々に沸き落ちてくる冷たくて白い塵。
土手だったはずのそこは、雪に埋れてただの白い山になっている。
新たに深く積もった雪の上に大の字で寝転んで、僕はいくら見ても限りなく降ってくる雪を眺めていた。
地元の雪は重たくて、地面に落ちても消えてくれない。




ユキが僕の地元に来ることはなかった。




手術は成功、術後の経過もいいように思えたが突然容体が急変してサヨナラも言わずユキは遠くに行ってしまった。


嵐のように、僕を振り回すだけ振り回して何処かに行ってしまうなんてユキらしい。ユキは空に昇って自由に遊びまわっている。そんな気休めを何度頭の中で繰り返しただろう?


何をどう言ったって、ユキはもう何も喋らず、何も感じず、笑うこともない存在になってしまったのに。



「ゆきなんて大嫌いだ…。」

捨てるように吐いた言葉は、降りしきる雪に吸い込まれて消えていく。こんなの綺麗でもなんでもない。何を見たって退屈でつまらない。

前の僕に逆戻りだ。


ユキ、ユキ。

君がいなきゃ、僕の目はこの空みたいにどんよりと暗い世界しか映してくれないよ。