雪の精霊

「本当はね、17歳。高校2年生。…後半まともに行けなかったけどね。」

コロコロと笑うユキ。その幼い表情に、17の響きはしっくりときた。



「…ねぇ、悠人くん。」


ユキの感情は忙しい。急に声のトーンが落ちて、目に微笑みがなくなった。



「私、手術するの怖いよ。」



手の震えはもう止まってて、それでもユキの声は泣いている様に思えた。死ぬこともある大病に、1人で立ち向かう少女。時折感じていたユキの儚さの理由がわかった。



「僕の地元はさ。」

ユキの綺麗な白金色の髪を、恐る恐る撫でてみる。この髪色だって、きっと強がりのひとつだったんだ。


「…うん。」

ユキは何も言わずに僕の手を受け入れる。大きな目はぐらぐら揺れて、ついに一筋の涙がこぼれ落ちた。




「すごくたくさん雪が降るところなんだ。雪が降った次の日は、家も道路も木も、窓の外ぜーんぶ真っ白。」


一言ごとに、ユキは素直に頷いてくれる。その度にぽろぽろと涙が溢れて、握り合った僕らの手に落ちていく。