雪の精霊

打ち砕かれた様に、悲壮な顔をするユキ。しばらくの沈黙の後、ユキはポツリポツリと話し始めた。

「小さい頃に心臓に異常が見つかってね?一度手術しているの、私…。その時は成功して、経過観察で元気にしてたんだけど…1年前、発作を起こして倒れたの。」


再手術か、投薬して現状維持か。どちらにしても最悪のケースを想定しなければならない状況に、ユキの両親はできるかぎりいい治療をできるところを探した。
…で、今年の春。心臓外科の権威と言われるドクターのいるこの病院に来たらしい。



「その先生はね、緩やかに死んでいくのを待つくらいなら高いリスクを負って手術をする選択もあるんじゃないかって言うの。…でも、やっぱり怖くて。」


ユキは笑っている。でも、その手は震えてた。




「怖くて怖くて、逃げ出そうかと思った時に見つけたの。猫背のまっくろくろすけ。」




ユキの言葉に、今度は僕が顔を上げた。