雪の精霊

「確信したのは、ユキが来なくなった時。…違和感は前からあったけど、信じたくないのもあって知らんふりしてた。」



“葉山ユキ。20歳。|《看護学科》の2年生。”


この時から、少し引っかかっていた。

うちの大学には《看護学部》はあるけど、|(看護学科)はない。

環の話によれば看護学部の2年生はもうすぐ実習を控えているらしい。実習では相応の身嗜みが求められるはず。それなのにユキの奇抜な髪色は不自然だ。

それに、ユキは今年の積雪を“初めて見た”と言った。
ユキが本当に2年生なら、去年から上京していたはず。去年だって、東京に雪が積もったと全国ニュースで大々的に騒いでいたのに初めてなわけがないじゃないか。


忙しいはずの看護学部生が、いつでも僕より先に待っているのも、別れる時一緒に校舎に入ってこないのも、ヘタクソな包帯の巻き方も、全部全部おかしかった。



理由を並べ立てていく度に小さくなっていくユキの手を、僕はより強く握った。

責めているわけじゃなくて、ただ真実が知りたいだけなんだ。お願いだから、そんな不安そうにしないでほしい。





「食あたりも嘘だ。だってここは、循環器内科の病棟だもん。」