雪の精霊

「悠人くん!?なんで…っ。」

驚き慌てて点滴の刺さる腕を背中に回して隠すユキ。伸びる透明な管とパンパンに膨れた点滴袋は、そんなことをしたって隠せるわけないじゃないか。


「甘いよ、ユキ。」


愚かな姿さえ可愛く思えて苦笑する。ユキはバツが悪そうに俯いて唇を噛み締めた後、突然顔を上げた。

「いやぁ、なんか私この間、食あたり起こしちゃって!こんな大袈裟にされてるけど、もうすぐ退院できるから!心配かけちゃって、ごめんね!」

ユキは豪快に笑って後頭部をかき乱す。僕はそれを黙って見ていた。


「そんなわけだから、あの、また退院したら会いにいくからさ!悠人くん、ベンチのとこで待ってなくてもいいよ!ねっ。」

焦っているのかユキの手は忙しなく動く。その度に点滴を吊り下げたガートル台がキィキィと揺れた。


「ユキ。嘘がヘタクソ過ぎ。」

危なっかしくて、点滴の刺さっている左手を優しく握って制止した。ユキはまた何かを言おうと口を開きかけたけど閉口して、大人しく俯く。しばらくしてから消え入るように呟いた。



「いつからバレてたの?」