華やかなJKデビューと同時に、彼氏をゲットするんだと決めていた。高1で同じクラスになった男子の中なら、ビジュアルと話しやすさでビビッと来る人を探し当てて、猛アピールを仕掛けた。
 私の思いは成就して、超絶カッコいい彼ぴっぴをゲットすることができた。高身長でジェントルマン、スポーツも勉強もできる自慢の彼。落ち着きはあるけれど、楽しむときはちゃんとテンション爆上げてくれる、とっても好みの彼。
 彼は中学の頃にも彼女がいたらしい。けれど上手く行かなかったみたい。その反省を生かして、うちには退屈させないように色んな気遣いをしてくれるから、本当に当たりくじを引いたと思ってる。恋愛競争における勝ち組のリア充になれたうちは、順調に楽しい高校生活を始めることができていた。
 彼はうちのことを好きでいてくれているのがよく分かる。でもその優しさが、他の女子にも向けられていることに嫉妬の心は隠せなかった。修学旅行とか、体育祭とか文化祭とか、彼は色んなクラスメイトと関わって、色んな活躍を見せている。その姿は、うち以外の女子の注目の的にもなっている。彼はうちのものなんだ。気やすく話しかけないでよ。そんな取り巻きに、あんたこそ博愛な優しさを振るわないでよ。あんたはうちの彼氏なんだから、うちから目を逸らさないで。その想いが募るたびに、彼への束縛をどんどんと強めていってしまった。

 高2の初夏。うちは振られた。穏やかな束縛解除だった。雁字搦めの鎖を優しく解き解すように、彼はうちを優しく解いた。
 束縛が強すぎたのかな。後悔しても遅い。振られる形でうちに返ってきたダメージは、うちが彼に課した束縛の代償なのかもしれない。
「君のことは嫌いじゃないけど、窮屈な思いに疲れちゃってさ」
 梅雨が始まって最初にした相合傘の中で、彼はそう言った。
 彼は、うちを傘の外に追い出すことはしなかった。独占欲さえむき出しにしなければ、これまで通り接してもいいと許してくれた。いっそ突き放してくれた方が吹っきれたかもなのに。好きなまま彼の隣に居ていいなんて、ずっと複雑な気持ちだよ。
 大事な彼をもっと大事にすれば良かった。自分自身が大事にされたいって、自己中の方が勝ってしまったんだ。

 輝かしく咲き誇る向日葵は、この世界で最も輝かしい太陽を見つめながら生きている。太陽が見ているのは向日葵だけじゃない。この世の全て。手の届かないところにあるはずの太陽を独占できるわけがなかったんだ。
 向日葵は、どうしても太陽の方を向いてしまう特性があるの。太陽が照りつける真夏の熱の中で、うちの恋は生き生きと咲いているの。うちの恋が終わるのは、太陽がその輝きを失ったとき。彼は局所に陰を落とすなんてできない。そうしてくれた方が楽なのに。
 彼との間を阻む傘でもあれば違うけれど、うちから陰を作ることもしたくはない。仄かな復縁の期待があるからなのかな。

 全てを照らす光を全身に浴びて、うちの恋は咲き続ける。その他大勢になっても、うちは彼を傍で見つめているから。